ハンプティのブログ

ハンプティ・ダンプティのように、いつもずっこけぶりを発揮しています。

ダンプテイ親父の マンドリン弾きのダンプテイ

マンドリン弾きのダンプテイ(マンドリン絵物語

原作 宮沢賢治 セロ弾きのゴーシュ

ダンプテイは、会社勤めを終えてからは、いつも家でぶブラブラと、大きななお腹をもてあまし、何もしないで過ごしていました。

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奥方は、ダンプテイが会社勤めの頃は、仲間から「ファンタジー親父」と、言われ、カラオケ、剣舞、詩吟、謡曲、オペラ――と、人気親父だったのに、この頃は、日向ぼっこばかりで、庭の番人のような生活態度に、ウンザリしていました。

奥方から「あんた、偶には、畑仕事でも、何でもいいから精を出したどうなの」と、怒られてばかりの毎日でした。

ダンプテイは、奥方からいろいろと小言を受けても何も興味が沸くこともなく、昔の夢ばかり見る蛸壺の中の親父で、人生これまでかと思っていました。

蛸壺や はかなき夢を 夏の月 芭蕉

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ある日のこと、ダンプテイがいつものように庭で裸になって、日向ぼっこをしていると、どこからかネズミが一匹、庭を横切って庭端に植え込まれてあった槙の木の垣根の陰からダンプテイの顔を覗き込むようにして、「チッチッチッ」と、リズミカルに御主人様、何かなされたらどうでしょうか」と、促しているでは、ありませんか

ダンプテイは、「チッチッチッ」と、リズミカルに啼く子ねずみの歌声を聞いて「そうだマンドリンを弾いてみよう」と、思わず大きな声で叫んでしまいました。

子ねずみからのマンドリンへのお誘いがあったように、思えました。

というのも、ダンプテイは、40年前にマンドリンクラブに所属していたことがあったからです。

ところが、マンドリンは、何処に、あるやと、探しても見つからない。

やっと、探し当てたマンドリンは、屋根裏部屋の中で、弾手もなく放置され、埃まみれとなって、ねずみの住処と、なっていました。

早速、ダンプテイはパソコン検索で地元のマンドリンクラブを探し当て、マンドリンを持って練習会場の公民館にでかけていきました。

会場の音楽室には次々とマンドリンを持ったご婦人方が集まってきました。

練習の音楽室の中には見慣れない訝しげな親父がいるなと奥方様の怪訝な顔、ダンプテイは、学生時代にマンドリンをやっていたんですけど、会に入りたくてと、心細い声で答えました。

クラブの楽手は40人程、楽長と、思しきお方が中央に立ち上がり、楽員が緊張の雰囲気の中、マンドリンの演奏が始まりました。

ダンプテイは、学生時代の合奏を思い出し、早速渡された楽譜で演奏をしたくワクワクしてきました。

新参者、一番後ろで静かにしていればいいのに、コンマスと思しきご婦人から、「前にどうぞ」と、言われるままに最前列に座り演奏会に加わりました。

予想以上に楽団の合奏曲は仕上がっていました。マンドラの低音の美しい歌声が聞こえてきます。

ギターのリズムの刻みがその歌声の響きを助けています。

アリアのようなマンドリンのソプラノが心地よい響きをもたらしている。

ダンプテイは、その日の練習会の帰りは、元気がありませんでした。40年間ものブランクは、とても大きなもの楽譜を見てからの指の運びが曲のリズクに追いていけなかったからです。

ただただ、団員皆さんの素晴らしいマンドリン演奏の技の凄さに驚嘆するばかりでした。

今年は、クラブの定期演奏会は20、周年記念演奏会とのこと樂手は、勿論のこと、とりわけ楽長は、熱が入っていました。

「こんな大変なときに、厄介の親父が入団してきたわね、面倒見切れないわ」とご婦人方のささやきが聞こえてくるような気がしてダンプテイは、心細くなってきました。

楽長からは、時々、指揮棒を放り投げて、演奏を中断させ、空を見上げて「何だ、これは、マンドリンは、リズムが悪い」と、ダンプテイのほうを見て、弾き直しと駄目だしの声が再三である。

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アンダンテは、何とか追いていけるもののアレグロの速いリズムともなるとダンプテイの指は、「しどろもどろ」である。

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ダンプテイのマンドリンは、40年も物置に放置されていたためか、具合が悪くなっており、弦と基盤とが随分と離れていてとても痛んでいました。

ダンプテイは、周りの樂手には、「どうもマンドリンの具合が調子悪くてね」と、上手弾けない原因をマンドリンのせいにしていました

しかし、マンドリンのせいだけでなくダンプテイの音楽的な技は、樂団員の中でも最下位というところでした。

合奏で早出しをすると大変である。「早だしをした者は、これから100円徴収する」と楽長が1STマンドリンのほうを睨んでおっしゃる。これは、きっと我輩のことだろうとダンプテイは、冷や汗が垂らりである。

 

自信をもって弾けるところを調子を出して弾いているとコンマスさんが後ろを振り返って「ピアノピアノ」と注意される始末である。こんな調子では、演奏会の参加もおぼつかない。

こんなことで、メゲルめげるわけにはいきません。ダンプテイは口を『凛」と結び右眼を皿のようにして楽譜のお玉杓子を追い、左目は、指のポジションとりで、もう一心不乱に弾いています。

突然、楽長が指揮棒を放り投げました。

団員全員に緊張が走ります。

みんな、ぴたりと曲弾きを止めてシーンと、しました。

楽長がどなりました。

「1STマンドリンの音割が悪い。ここは、テォテテ テテテイです、21からやり直し。

「はいっ、どーぞ」と、楽長の指揮棒に従って、 指摘のあった所の少し前からやり直しました。ダンプテイは、ビクビクと冷や汗を出しながら指摘されたところを何とか弾きました。

ほっと安心しながら、続けて弾いていくと、楽長が、また手でバーンと楽譜を叩きました。
「誰だ、調弦ができていないは、困るなあー僕は、君に調弦の仕方を教えてまでいる暇ないんだがなあー」と、ダンプテイの方を睨み付けました。

ダンプテイは、自分は確実に演奏会のお荷物になっているなと、感じましたが、それでも次の練習会では、早速調弦器を買って合奏に臨み、頑張りました。

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家では、ダンプテイは、奥様に練習の音が煩いと、言われているので、しっかりと扉を閉じて自分の部屋に籠もり練習に励みました。しかし、練習では、旨くいったかとおもっても、団員との合奏ともなると焦ってしまうのか、左指が追いていかないのでした。

奥方からは、「だから言ったでしょ、こういう楽団には、提起演奏会が終わってから入部すべきで、土台あんたには、無理なのよ」と、いわれる始末である。

ダンプテイは、楽団の仲間には、どうも脳細胞に黴のために回路が切断されているよだと技の悪さの照れ隠しに隣の若い奥様の樂手に話して下手の言い訳を歳のせいにする始末です。

中々上達せず、演奏会はでられないと諦めかけては、「アアー投げては、いかん、投げてはいかん」と、自分に言い聞かせ、励みましたが、これが限界と嘆く毎日でした。

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そんなとき、ダンプテイの部屋をコツコツと、ノックする者がいる。

「さて、奥方は、とっくに御休みの筈、誰がこんな夜更けに」と、ドアをそっと開けると、何と子ねずみが背中に栗の実を背負って、ドアの向こう側に立っているではないか。

たしか、マンドリン楽団に入る切っ掛けを与えてくれた子ねずみのようである。

「ご主人様、今日は、お願いに参りました。どうぞマンドリンの練習を続けて頂きたいのです」と、その子ねずみは、右手にもっている栗をダンプテイ差し出しました

。「どうぞこれは、そのほんのお礼でございます。」

子ねずみは、「ご主人様が家でマンドリンをなさると、私の母上の病気が良くなるようで、母が癒されるからもっともっと、演奏をせがまれているのです。

どうぞ練習を続けて素晴らしいマンドリンの音色を聞かせて下さい」と深いお辞儀をしてダンプテイにお願いをしました。

ダンプテイは、こんな下手なマンドリンの弾手の音色でも喜んでくれる者がいるとは、ありがたいと、感激し、今まで以上に熱を込めて練習に励みました。

ダンプテイがマンドリンの練習をするときには、子ねずみが、ダンプテイの足に鼻を擦りつけて、リズムを刻みメトロノームの手助けをしました

ときには、練習を留めて、「そこは、チーチチチですよ」と、リズムをダンプテイの足に刻んで子ねずみは、マンドリンの練習を応援しました。

その結果、ダンプテイは、めきめきマンドリンの腕をあげていきました。

「先日まで15人のマンドリンの弾き手の中で序列最下位のダンプテイもコンマスの上を行くのではないか」との噂が楽団中に流れ始めました。

さて、記念すべき演奏会が始まりました。

楽長も張り切っています。

第一曲目は、ブラッコ作のマンドリンの群れ、静かな月夜の中、遠方からマンドリンの囁きが鳴り響き、あたかもたった一つマンドリンの如く、15のマンドリンが静かに近づいてくるようです。

トレモロに 椰子の葉揺れて 秋の暮

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終盤のアレグロでの強いスタ-カットのエンデングが終わると、観衆も聞きほれたのか大歓声の拍手、演奏会の滑り出しは好調です。

指揮棒を振る楽長も満足な様子。

この調子で最後まで行こうという気持ちが団員全員につながり、団員全員が楽長の厳しい練習成果が発揮できる雰囲気となってきました。

さて、2曲目は、難曲と評判の C.マンドニコ作スペイン組曲である。

マンドリンのソロメロデーが何といってもこの曲の最大の山場となる。

ところがどうしたことが、コンマスさんのマンドリンの弦がプツンと切れてしまいました。

なんたることか、さて、この演奏は、どうなるのかと、団員全員に緊張が走りました。

子ねずみが「ご主人様 ここは、出番ですよ」と、ダンプテイの足下で囁きました。

子ねずみに後押しされてダンプテイは、思い切ってソロ曲を弾き始めました。

どういうわけか、マンドリンの音色とは思えない清らかな響きが会場全体に響き渡りました。

観衆からは、溜息きが、聞こえてくるようで、会場一堂がダンプテイのトレモロに聞きほれています。

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終局になると、会場は、観衆の興奮したどよめきがブラボー、ブラボーとなって、沸き起こり、いつ迄も鳴りやみません。

それに、樂手全員もダンプテイの方を向いてよくやったと」の拍手で鳴り響きました。

楽長も喜んで、ダンプテイと抱きあっています。

さて、20周年記念演奏会のエンデングは、メモリーキャツである。

軽快な3連譜が続くメロデーに1年間の苦しい練習の記憶を重ね合わせ団員の中には涙するものもいる。

ダンプテイもこんな素晴らしい仲間とひとつの作品を作り上げる合奏の喜びで胸が熱くなっていました。

その涙の合奏のメロディに合わせてのアナウサーの「本日は20周年記念演奏会にご来場して頂きありがとうございました」のお礼の挨拶と共に、カーテンが降りていきました。

ところが異変が起きました。カーテンの反対側の客席の全員が立ち上がりアンコールの叫び、「髭親父、髭親父」との声が沸きあがる。

どうやらダンプテイに対して何か演奏せよとの観客の催促である。

会場を沈めようと、楽長の「お静かに、お静かに」との静止の願いも聞き入れられません。

仕方ありません、楽長はダンプテイの手にマンドリンを押し付けて舞台の中央に押し出し、「ダンプテイ君 何か演奏せよ」と、命令しました。

ダンプテイは、子ねずみと一緒に練習した「子ねずみのワルツ」を演奏し始めました。

マンドリンの穴の中に子ねずみが入り込み、「チーチチチーチチ」と、リズムをとって演奏を盛り上げました。

このアンコールの出来栄えも見事で嵐の如く割れんばかりの観客の拍手である。  

子ねずみもマンドリンの穴から飛び出て舞台を跳ね回って喜んでいました。

健康を取り戻した母ねずみが最前列のお客さんの椅子の下で、尾っぽを振り上げ、地面を叩きつけ喜んでいました。

お客さんも今日の20周年記念マンドリン演奏会に満足して帰っていきました。

ダンプテイの顔は久しぶりに、赤くほてって、明るくなっていました。一年前のあの青ざめた悲しい顔は、どこにもありませんでした。

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これもみんな子ねずみさんの御蔭です。

鼠さんありがとう。

ダンプテイの目からも涙があふれて止まりませんでした。

完了

それでは、今回のお話は、これまで、

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